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薄荷のキャンディ

薄荷の匂いの――運命の人。


「薄荷キャンディー」


9組の昼休み。
いつもの四人組で集まって売店で買ったパンや持ってきたお菓子片手に雑談する。
普段は食べるものがなくなるとすぐ寝てしまうが、今日は週一回あるミーティングのみ日だった。
放課後の練習がなくて嬉しいではなく、明日の練習が待ち遠しいというのが正直な感想だった。
しかし彼らも一応健全な高校生、たまにはくだらない事で騒ぎたくもなるわけで。

「マジ兄貴の奴、ひどいんだぜっ!一口つったのに…ひとの唐揚げ食いやがって!!」
「田島んとこはやっぱ食べ物競争、激しいな」
「遠慮したら負けだかんな、お客さんでも容赦なしだもん」
「うちは1人分ずつ盛ってとってあるから、一応問題ねー」
「平和でいいんじゃん」
「でも最後に食うから、残りもん多い」
「たっぷりメシは食うんだろ」
「ふりかけ掛けてな」
「あ…お、俺…俺もっ!」
「三橋も、ふりかけ?」
「う、うん。お母さんが夜勤のとき、に」
「そっか~。俺は冷凍モノが多いな」
「浜田、夜のバイトがあるもんな」
「ん、そろそろちゃんとしたメシが食えるかなって」
「なに給料日?」
「おう、明日な」
「やったー!!じゃ、明日昼になんか奢って!」
「おいおい、貧乏人に強請るな」
「いいじゃん、売店で買ってよ」
「…泉、俺の話し聞いてた?」
「聞いてたっす、浜田『先輩』」
「はぁ~…いいよ1人300円までね」

キラキラした瞳の田島、こういう時だけ後輩面の泉、どうしようかオロオロした三橋。
三人三様の表情を見渡して、観念したのか浜田はため息混じりに了承する。

「は、浜ちゃん…大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。三橋が気にすることねーぞ」
「泉……それ、俺のセリフ」
「よーし!俺、明日のためにちょっくら売店、偵察してくる!」

浜田も付き合えよ、と田島にしがみ付かれ明日の資本者・浜田が立ち上がる。

「古典までには帰ってこいよ」
「オッケー」
「た、田島くん、浜ちゃん。き、気をつけてね」

見送る三橋に手を振って応えた2人の背が見えなくなる頃、やっと三橋が席に戻ってきた。
向かい合う二人の間には未開封の箱菓子に散らばった紙くずが広がっている。
スナック系しか食べない泉には無縁なチョコ・飴・マシュマロに手を伸ばす甘党・三橋。
にっこり嬉しそうに笑いリラックスしたその表情をなんとなく見つめる。
ひとつずつお菓子を手に取り、アーモンド色の瞳を輝かせながら口に運ぶと顔中に「美味しい」を表す。

――本当に餌付けしがいのある奴だ。

机に無造作に置かれたお菓子のほとんどが三橋の為に用意されていることを三橋だけが知らない。
オーバーワークぎみで頑張り屋の我らがエースへちょっとしたご褒美。
ご褒美…とは与えている側の勝手な解釈かもしれない。
だって三橋はお菓子が食べたいから頑張ってるわけじゃない、きっと性分なんだろう。
泣き虫でちょっとしたことでウジウジするネガティブ思考な奴だけど、芯がある奴だから。
内心甘やかしすぎかな、と思わなくもないが…この表情を見たらもう退けそうにない。
むしろもっと、もっと見たくなる――その子犬のように愛くるしい笑顔を。

「サクマ*ドロップか、懐かしいな」
「うん、俺これ好きなんだ」
「何味が好き?」
「イチゴとメロンかな!…泉くん、は」
「レモンかな」
「甘く、ないから?」
「当たり。あと薄荷もよく食ったな」
「…………」
「…三橋?」

肩肘つきながら小さい頃を思い浮かべていると、三橋が急に俯いてしまった。
おい、と顔を上げさせると大粒の涙をぽろぽろ流していて、ぎょっとする。

「み、みはし?ど…どうし」
「おっおれ、……ちゃった」
「へ」
「は、はっ…か…さい、ごの、いっこ、た…ごめ…」
「あー」

『薄荷味の最後の1個を食べちゃった、ごめん』

理解できたところで「気にするな」と髪を撫でてやる。最初はビクビクしてた三橋も次第に落ち着いてきた。
最後にひと撫でして手を離すと、やっと涙も止まったようだ…瞳と鼻は赤いがこればかりは仕方ない。

「泉くん、本当にごめんね」
「気にすんな。別に今、食いたかったわけじゃねーから」
「う、うん」

むしろお前が泣いたことのほうが俺的にはショックなんだけど。
俺が泣かしたみたいじゃん、いや…泣かしたようなもんか、うわぁ…胃が、胸がキリキリしてきた。
阿部が日課のように三橋を怖がらせて泣かせる様を見て、俺はそんなこと絶対しない。
自分の行いで三橋を泣かすようなことはしないと密かに誓ってたのに。

――たかが、薄荷ドロップに破られるとはっっ!!

理不尽な怒りに燃える心を三橋には見せないようにこっそり溜息をつくと。
三橋が「あっ!」と何か閃いたかのように顔を寄せてきた…なぜか嫌な予感がする。
無意識に後ろに椅子ごと身を引いた泉に三橋は勢いよく立ち上がり、傍にやってきた。

「あ、あのね」
「…なに」
「薄荷、新しいのはないんだけど…」


「俺のでよかったら受け取ってください!」


あ、あの…三橋?
自分が今、なにしてるかわかってるか?
俺は歯医者じゃねーぞ、おーい。

…えっ…マジ何してんの、こいつ!!

なんで舌出してんの、俺、誘われて…て、そんな訳ねーし。あの三橋だぞ!
いや三橋が舌出そうが、口あけようが、そんなこと俺には関係ねーけど…むしろ可愛いけど。
目の前に差し出された真っ赤な舌の上には、対照的なまっ白い物体――はっか、だ…薄荷っ!?

…え、なに、それを俺に、受け取れと?…どうやって!え…う、う…嘘だろっ!!!

「…み、みは…?」
「は、はやくっ…と、溶けちゃうよ、い、ずみくんっ!」

ちょ、まっ…ここ教室なんですけど…なんか視線、痛いんですけどっ!

「いずみ、くん?」

あーーーもうっ!わかったよ、腹くぐればいいんだろっ!?

「三橋っ」
「いず…み、く……わっ!ま…待」
「いいから、来い!」

突然の泉の行動についていけないらしい三橋の腕を強引に掴み、教室を出る。
どこに向かうでもなく、とりあえず2人で話せるとこならどこでもイイ!
チャイム音をバックに三橋と二人歩き続ける――サボり?この際気にしない。



三橋、覚悟しろよ――俺を本気にさせた代償はデカイぜ。



END → NEXT「恋のキューピット(R*18)」
え…っと…当初の予定では「さわやか恋未満・イズ*ミハ風味」なお話しだったんですけど(笑)
しかも次回、え…ろ要素ありな予定になりました(まさか初めての⑱作品がイズミハになるとは!)
泉くんは普段スゲー男前でカッコいい分、突発的な出来事に弱くてキョドるとイイです。
タイトル通りあの方たちの歌をイメージしました、好きなんです。
では暴走した泉と無自覚な三橋の続きは近日「恋のキューピット」にて条件が合うレディ、ぜひお付き合い下さいませ。
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