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捧げもの ハ*ルミハ 「春よ、来い。」

君に見せたくて、俺と一緒に見て欲しくて。



♪~♪~♪



「あ…」

ある人だけに設定した着うたが響き慌ててカバンを漁れば、「新着メール一件」の表示。
折りたたみの携帯を開きメールの受信箱を開くと。

「部活終わったら ××公園まで 来い」

普段と違ってあまりの素早い身支度に野球部の皆が驚く中。
西浦高校野球部エース・三橋廉は足早に校門を駆け抜けるのだった―…。



よ、来い。」



「――はぁ…っ……あれ?」

おかしい。そう思った。
いつも待ち合わせで利用するこの公園。2人の指定席になった入口近くのベンチ。
メールをもらった時点で彼はすでにそこにいるんだと思ってた。
空席の二人掛けのベンチをぼーと見つめ、歩み寄る三橋の足元は覚束ない。
原因は部活後に全力疾走した…だけではなく。

はるな…さん」


――大好きなあの人がいないから。


ぐるっと体ごと周囲を見渡しても目的の人はもちろん人影が全くない。
額から滲んだ汗が急に冷たく感じる。ベタベタするシャツが鬱陶しい。
カバンからタオルを引っ張り出して汗を拭いても、不安に満ちてく心は止められない。
携帯を確認しても着信も新着メールもない。
時間的にはそんなに経ってないのに、もう何時間もここにいるように感じる。

――ずっと1人で。

「時間は…決めてないし。すぐ、来るよね」

そうだ。
あの人はよく遅れて来るじゃないか。
廉、待たせたな。って気軽に「ごめん」とは言えないあの人は苦笑いを浮かべながら。
強引に俺の手を握って、人影に隠れてキスを。
想いを伝えるキスをしてくれる、きっと今日も。

「今日も…キスしてくれますよね?はるなさん」

泣き虫の俺はぐちゃぐちゃになった感情のまま涙をこぼす。
あの人が来たら真っ赤な目を見て、きっとこう言う。



「『ウサギ目して、どうしたの?』」


「…っ…は、るな…さ…ん?」



後ろから榛名さんに抱きしめられた俺は、振り向こうとすると抱く腕の力が増す。
何度も繰り返して、諦めた俺は首に回った腕を両手で握る。
色んな気持ちをこめて。

「―…早すぎ」
「う?」
「廉、お前早すぎなんだよ。ダッシュして来たっしょ?」
「だ、だって」
「なんで今日に限って早いの。いつもはまだ着替えてる時間じゃん」
「そ、それは」
「はいはい。一秒でも早く俺に会いたかったんだよな」
「うぅ…」
「あーあーもう泣くな。からかって悪かった。俺だってすげぇうれし…」
「…え?」
「あ……その、なんだ。だ、誰だって嬉しいだろ!俺に会うために普段トロい奴が走ってきてくれたらさっ」

なんか文句あるか、と逆ギレぽく耳元で言う年上の恋人がなぜか可愛く感じて。
俺は泣き顔のままくすくす笑ってしまった。
その笑い声にムッときた榛名さんに強引な体勢のままキスを仕掛けられたのは言うまでもない。


不器用で照れ屋な榛名さんらしい――気持ちが伝わるキスを。





「せっかく早く来て廉が来るの待ってたのに…やっぱ飲みもんは後にすべきだったぜ」
「―…気づかなかった、です」
「そりゃそーだ。お前すげぇ勢いで横を走ってくんだもん。声掛けたのに無視されたし」
「す、すみませ…」
「お前あんなに早く走れるのな、びっくりした」
「だ、だって」
「部活後でもそんだけ体力があるってことだろ、イイことじゃん」
「……そう、ですね」

きっと待ち人が榛名さん以外だったら、全力疾走なんて出来ないだろう。
漠然とながらそう思う、野球とは別の次元で。

榛名さんは俺にとって大切で『特別』な人だから。

「廉、こっちだ」
「…え」
「目を閉じて、まっすぐ歩くんだ」
「急に、なんで」
「いいから。怖いなら俺が引っ張ってやるから」
「は、はい…絶対、手離さないで下さいね」
「ああ。そのまま、ゆっくり。遠くないから、今半分ぐらい来た。目は開けるなよ、そのまま真っ直ぐ」
「は、はるな…さ」
「大丈夫、もうすぐだ」
「ま、まだ…ですか?」
「もう5歩だ。1、2、3、4、5、…到着。目、開けていいぜ」


ゆっくり瞼を開け、周囲の視界に馴染んだ先には。


「――…さく、ら…?」


「そう。まだ一枝しか咲いてないけど、正真正銘・桜だ」
「早咲き、ですか」
「品種のことはよく分かんないけど、毎年ここの桜は普通のより早いのは確かだな」
「毎年…見に来るんですか」
「ああ。小学性の頃からだから、もう10年近くになるか」
「家族とか、友達と一緒に?」
「いや…俺1人だ」
「…え」

「廉に見せたかったんだ。…違うな。俺が、」


廉と一緒にこの桜を見たかったんだ。


「1人でいいって思ってた。本咲きまでこの桜を独り占めして、それで満足だった。
一昨年の夏に廉のこと好きになって、ずっと頭からお前のことが離れなくて、苦しくて。
冬になっても何も出来なくて、でも廉に振り向いて欲しくて。
面と向かって気持ちを伝えられない自分が歯がゆくて。――…んで、去年ここに来て思ったんだ」


俺の隣には、廉が居て欲しい――…一緒にこの桜を見て欲しい。


「その翌日、俺は廉に告白したって訳だ。つまり」
「わっ…」
「やっと俺の願いが叶ったつーわけ、わかったか?」
「は、はい」
「よし。じゃ、さっさと帰ろうぜ」
「え…もう、ですか?」
「だって寒いだろ。ちょうど金曜日だし、俺んち泊まってけよ」
「は、はい……じゃなくて、せっかく来たのに」
「いいから、帰るぞ」

でも、と立ち尽くす俺を榛名さんがやっぱり強引に引っ張っていく。
目を閉じていたため分からなかったが、この桜は公園の隅でひっそりと佇んでいた。
この儚げな桜を榛名さん1人で何を想い見上げていたんだろう。
きっと俺には計り知れない複雑な感情を抱えていたはずだ。
そんな思い出の地で俺をことを想ってくれて、一緒に連れてきてくれた榛名さん。
――…自惚れてもいいのかな、俺も榛名さんにとって。

「榛名さん」
「んー」
「また一緒に来ましょうね」
「…へ」
「早咲きだけじゃなくて、あの桜が本咲きして、散って、葉桜になって…散って、冬を越して」
「………」
「来年の春、ううん、これからずっと、春夏秋冬全部、この桜を一緒に見に来ましょう」
「…廉」
「俺も、俺の隣に榛名さんが居て欲しいって思ってるから」
「―…約束、だな」
「はい」

手を握って俺は歩き出す、すぐ隣にいる榛名さんと一緒に。
儚くも美しく魅了するであろう、薄紅色の花びらを思い浮かべながら。
握った手に力を込めた―…この想いが愛しい人に届くようにと。



願わくば、榛名さんにとっても俺が「特別」でありますように――。



END
「夏空うさぎ」きろぴんさんに相互リンクのお礼として(押し付けともいう)捧げます!
リクエスト頂いたのが「ハ*ルミハで春っぽいおはなし」という素敵なものだったので、頑張りました。
…が、いかがだったでしょうか。煮るなり焼くなりしてやって下さい(きろぴんさんのみ)
今回の榛名さん、よく喋ります。結構すごいこと話してますが、無自覚です。
あとから火を噴いたように顔を真っ赤にさせたらいいと思います。
きろぴんさん。こんな春田ですが、これからも仲良くして下さいませ<(_ _)>
素敵な絵と漫画の更新いつも楽しく拝見させて頂いてます~もう大好きです!!(言い逃げ)

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